NASを導入して早2年。Synology DS223jのハードディスク空き容量は2.2TBになっています。
まだ容量に余力はあるものの、昨今の寒すぎる冬の気候に伴い「データ消失の物理的リスク」に直面し、急遽NASに関連するデバイスをひとつ追加で購入いたしました。
購入したデバイスは「無停電電源装置(UPS)」。
こんなことをしていると「初期投資と電気代を考えたら、結局クラウドストレージの方が安いのでは?」なんて言われてしまいそうですが、これはコストではありません。あくまで「保険」です。NASユーザーはすべからく導入すべし!そんな風潮がないこともないのですが、ブレーカーが落ちない家庭には必要ないもののはずです!たぶん。きっと。おそらく。。。
言い訳がましく背景の説明をいたしますと、我が家は集合住宅で契約アンペア数が小さく、家電を同時に使うとすぐにブレーカーが落ちてしまいます。
そんなわけでブレーカが落ちた際に、HDDに書き込み中の「オギコの思い出」が破損することを考えると恐ろしくてなりません。「NASを守るためには無停電装置が必要」とのことなので、リスク回避のためにポチってしまった次第です。
ちなみに余談ではありますが、昔パソコンを買った方はHDDの読み取りヘッドが「地上から30㎝を飛ぶジャンボジェット機のようなもの」といった表現をされていたことを覚えているのではないでしょうか?現在、その距離はさらに縮まり、数nm(ナノメートル)の距離まで近づいているという話。NASのHDDヘッダが墜落する想像をすると恐ろしくてなりません。※実際は墜落保護機能もあるみたいです(笑)
と、いうわけで私が導入したUPSについて解説しておきます。これからNASを導入する方、あるいは既に運用中で電源に不安がある方の検討材料になれば幸いです。
まず、NASについてご覧になる方は以下の記事をご覧ください。
UPSとは
毎度のお作法で無停電装置についてです。
Uninterruptible Power Supply(無停電電源装置)は、停電や電圧低下などの異常時に、内蔵バッテリーにより接続機器(PC、サーバー、医療機器など)へ瞬時に電力を切り替え、一定時間電気を供給し続ける装置です。主な目的はデータの消失防止や機器の安全なシャットダウン、および急な電力停止による故障を防ぐこと。
UPSの主な機能・特徴
瞬時の電力供給: 停電発生時に瞬時にバッテリー駆動へ切り替わり、機器のダウンタイムを防ぎます。
安全なシャットダウンの確保: 停電中に安全にシステムを閉じる時間を稼ぐ(数分〜数十分)ことができます。
電源トラブルからの保護: 停電だけでなく、電圧低下(サグ)、過電圧(サージ)などのノイズをカットし、常に安定した電気を供給します。
主な用途: デスクトップパソコン、サーバ、NAS、データセンター、医療機器、POSシステム。
UPSの方式と種類
常時商用給電方式 (スタンドバイ): 通常時は商用電源をそのまま供給し、異常時にバッテリーに切り替える方式。安価で小型、主にPC向け。
ラインインタラクティブ方式: 常時商用方式に電圧調整機能(AVR)を追加したもので、入力電圧が不安定な場所に適する。
常時インバータ給電方式: 常にインバータを通してクリーンな電力を供給する。高価だが、最も信頼性が高く、瞬断のリスクもない。
※インバーター給電以外では、ごくごくわずかな時間ではありますが、「瞬断」は発生します。ラインインタラクティブ方式の場合、電圧調整機能が付いていて、停電時だけでなく、日常的な『電圧のふらつき』も自動で補正してくれる賢い機能が付いています。バッテリーを無駄に消耗させず、常に安定した電気を機器に届けられるため、一歩進んだ安心感があります
出力波形の違い
正弦波と矩形波
UPS(無停電電源装置)の正弦波はコンセントと同じ滑らかな波形で全ての機器に対応、矩形波はブロック状で安価だがPFC電源搭載PC等では誤動作の恐れがあります。PCやサーバーには「正弦波」が必須です。矩形波は家庭用ルーターや低コスト重視の用途に向いていますが、多くの電子機器において故障リスクが伴うため注意が必要です。
| 特徴 | 正弦波 (Sine Wave) | 矩形波/疑似正弦波 (Square/Modified) |
| 波形 | 滑らかな曲線(コンセントと同じ) | 角張ったブロック状の直線 |
| 互換性 | 全ての機器(モーター、PFC電源等) | 一部機器(PC、精密機器)で誤動作 |
| ノイズ | 少ない | スイッチングノイズが発生しやすい |
| 価格 | 高価 | 安価 |
| 適した用途 | サーバ、NAS、PC、HDDレコーダー、医療機器 | 家庭用ルーター、TV、見守りカメラ(防犯カメラ) |

導入上の注意点
寿命: バッテリーは消耗品であり、通常3〜5年での交換が必要。
容量選定: 接続する機器の合計消費電力(VA/W)に見合った容量のUPSを選ぶ必要がある。
要するに急な停電で大事なデータが壊れないようにする、でかいバッテリー電源の事です。
コンセントからの電源供給が止まっても、UPSからの電源供給があるので、しばらくは稼働し続けられるようになると言うわけです。
でかいバッテリーとは言いましたが、実際にはポータブル電源とは異なりますので一応以下についてもご認識お願いします。
ポータブル電源はバッテリーに給電して、接続された電子機器類にバッテリーから放電します。従って、バッテリーに常に通電していることになり、バッテリーへのダメージが蓄積されていきます。UPSの場合、平時は商用電源(通常のコンセントから流れる電源)を供給し、停電や電圧が下がった異常時に即座にバッテリーからの電源供給に切り替えるというものです。
APC BR400S-JP E について
さて、お作法には従いましたので、製品について書いていきましょう。
製品諸元
製品の規格です。バッテリー交換可能で、値段も安価(amazonで17,000円程度)。矩形波のUPSとあまり変わらない金額で購入可能。
| 主要 | |
| 負荷運転時間W 最小-最大: 24-240 W | 5分 39秒 |
| 最大使用容量 | 100 % |
| 定格入力電圧 | 100 V AC 単相 |
| 最大入力電流 | 8 A |
| 開閉電流容量 | 10 A |
| NEMA 保護等級 | 50/60 Hz +/- 3 Hz 自動検知 |
| 出力電圧 | 100 V ac 単相 |
| 最大出力容量(W) | 240 W |
| 最大出力容量(VA) | 400 VA |
| 出力コンセント形状 | 3 NEMA 5-15R3 NEMA 5-15R サージ |
| USB Charging Port | None |
| 最大出力容量(VA) | 400 VA |
| 最大出力容量(W) | 240 W |
| 公差 | 標準 6 ミリ秒: 最大 10 ミリ秒 |
| UPSの運転方式 | ラインインタラクティブ |
| 出力波形の形式 | 正弦波 |
| 効率 | 98 % (全負荷)97 % (50%負荷) |
| 補足 | |
| バッテリータイプ | Lead-acid internal included |
| コントロールパネル | ステータス監視と制御のための多機能LCD付コンソール |
| アラーム | バッテリー駆動時のアラーム : distinctive low battery alarm : 過負荷時継続アラーム |
| インターフェイスポート | USB port |
| サージエネルギー率 | 1103 J |
| ケーブルの長さ | 1.8 m |
| カラー | 黒 |
| 高さ | 190 mm |
| 幅 | 91 mm |
| 奥行き | 310 mm |
| 重量 | 6.8 kg |
| 取付優先 | No preference |
| 取付方法 | ラックマウント不可 |
| 2つのポストに取り付け可能 | 0 |
| USB対応 | Yes |
| 設置 | Tower |
| パワーモジュールが充填されたスロットの数 | 0 |
| 空のパワーモジュールのスロットの数 | 0 |
| 冗長 | No |
| 製品群 | Back-UPS Pro |
| 製品またはコンポーネントタイプ | 無停電電源装置 (UPS) |
※公式サイトから転用
余談ですが、筐体はほぼBR550S-JPと同じです。バッテリー交換する際のバッテリーも同じもの(APCRBC122J)を利用できるとのこと。ただし、出力自体は購入した筐体によって決定されますので、その点、お間違えのないようご注意を。
また、バッテリー不具合については3年以内だった場合は無償交換。以降、バッテリーを純正品で購入して交換する場合、送料元払いにはなりますがメーカー側での処分サービスがあります。
製品導入にあたってのこだわり
なんといっても「導入製品のなににこだわったのか」を書かなくては、個人ブログのガジェットレビューは始まりません。 今回のこだわりをご説明するとすれば、「正弦波のラインインタラクティブ方式」です。
製品についてはAPC・サイバーパワー・オムロン・UGREENあたりが有力候補になると思います。私はAPCかオムロンがよかったので、そのなかでも手頃感があったAPCに決定。(オムロンは医療機器を扱うだけあって非常に高性能な印象、サイバーパワーとUGREENは手頃感はあるが、レビューを眺めると少々クセが強そう。)
正直、NAS以外の家電の電源については、ブレーカーが落ちようが逆流雷サージが発生しようが別にいいんです。(※電源タップはサージ保護タップを使っていたりしますので、厳密にはブレーカー落ちの脅威だけです。)
しかし、精密機器であるNASに関しては、瞬停(いわゆる瞬断)が致命傷になり得る脅威となります。※ブレーカー落ちを瞬断とは言い難い部分もありますが、Hold-up Time(機器で電力をまかなえる保持時間)を超える無電時間となる現象を「瞬断」として書かせてもらいます。
「瞬断 怖い」
そんな風に言われる中で、安価な矩形波のUPSに関しては「バッテリー切り替え時にちょいちょい瞬断が発生する」との書き込みを見かけます。(矩形波でもメーカーの対応表にはOKが書いてありますので、そこまでナーバスになる必要はないのかもしれません…)
ただ、そんな不安な書き込みのある矩形波電源を、わざわざNASを守る為に購入するわけにもいきません。 そもそも「NASを守ること」がプライオリティ1であり、それ即ち「オギコとの思い出を守ること」なので。
数千円をケチる話ではこだわりとは言えなくなってしまいます。無駄なこだわりかもしれないことを踏まえつつ、今回は「正弦波のラインインタラクティブ方式」にこだわったというわけです。
BR400S-JP Eは、正弦波・ラインインタラクティブ方式で、なおかつ安価という、私のニーズに非常にマッチした製品でした。
DS223jとの親和性
前後しますが、用途としては「NASの保護」が目的になりますので、私の所有するDS223jとの相性について確認する必要があります。
これについてはSynologyのWebサイトに製品互換リストがあります。

「APC BR400S-JP」この製品についてはAPCがテストしたものではなく、Synologyがテスト者とされています。ベンダーテストではなく、メーカーテストですが、しっかりと互換リストに提示されています。
実際には矩形波製品も多く提示されていますので「低コスト」や「小型」を優先される場合はコンパクトな矩形波UPSでも問題ないかもしれません。
DS223jの消費電力は、アクセス時に16.31Wなので、正直、出力W数も気にするようなレベルではありません。
そもそも家庭用の電子機器をつなぐ中で、出力W数の大きいものを選択しなければならない理由はそれほどないと思っています。また、UPSの目的として、停電時にNASを安全にシャットダウンすることであることを考えると、何時間もの停電時間を乗り越えられる出力が求められるわけでもありません。
ゲーマーで「自作のPCの出力パフォーマンスを全力で維持したい」とか、動画編集をする方で「モニターを4枚以上設置している」といった環境を守る用途でなければミニマムの出力で困ることはないと言うのが私の意見。
ちなみにネット回線のモデムとWiFiルーターも接続しましたが、あわせて30Wにも満たない程度の電力消費です。NASの電力とあわせて50Wを見込んだとしても50分程度の稼働ができる計算なので、シャットダウンまでのランタイムとしては十分な時間です。
また、回線機器をUPSにつないでおくことで、電源の異常をスマホへプッシュ通知するまでをセットにして、安全に電源を落としてくれます。
DS223jとの接続
接続手順は非常に簡単でした。注意として「筐体の中のバッテリーケーブルの接続をお忘れなく!」です。
配線


製品保護用のシールに書いてある内容ですが、商品が到着、開梱したら、まずバッテリーのケーブルを差し込まなければいけません。
これを忘れるとバッテリーでの稼働ができず、ただのタコ足タップになってしまいます。
UPS本体のカバーをスライドさせ、バッテリーに赤いケーブルをつなぎます。




本体の背面側を見て、左側がバッテリーから電源供給される方のコンセント。右側が逆流雷サージ保護のコンセントになります。

NASの接続はもちろん左側コンセントから。そのうえで付属のケーブルを利用してインターフェースポートからNASのUSBに配線をします。
これで接続の手続きは完了。
UPSの起動
配線が完了したら、UPSを起動します。
前面パネル上部に電源ボタンがありますので、長押しして電源ON。パネルにUPSの状態を示す表示が現れます。
右上のボタンがUPSの状態の詳細表示切り替えボタンです。デフォルトだと、詳細の表示は一定時間で消えてしまいますが、このボタンを長押しすると常時表示にできます。
上部に表示される電波表示のような三角が出力の状態、下部の電池マークがバッテリーの状態になります。

ソフト側の設定
続いてSynologyのディスクステーションマネージャーからNASの設定を行います。
[コントロール パネル] > [ハードウェアと電源] > [UPS] を確認し、UPSが適切に接続されているとUSB UPSサポートを設定することができます。

また、最下部にある「デバイス情報」をクリックすると、接続されている機器の名前が確認できます。

いわゆる「手順」についての説明は公式サイトで詳細に書いてありますので割愛。

設定内容を申し上げると、私はスタンバイモードになるまでの時間を「5分」と短めに設定。50分稼働できるからと言って「できる限り頑張れ!」といった設定にはしていません。
設定でもう一つ重要なのが、再起動の設定です。
[コントロール パネル] > [ハードウェアと電源] > [全般]で、[停電後自動的に再起動する] オプションが選択されていると、電源が復帰すると自動的にNASの電源がオンになります。
以上で設定完了。マニュアルなしで設定できるのが「いい製品」だと思われるかもしれませんが、なかなかインフラ作業はそういったことが難しい部分だと思います。きちんとマニュアルを読んで、設定手順に従えば難しい作業ではないので、公式サイトに書いてある手順をしっかり読んでいただきたく思います。
使用感
使用感というほどのものではありません。乱暴な言い方をしてしまえば「バッテリー付きの電源タップ」なわけですから。
各機器、普通に動作しました。
ちなみに、一度ブレーカーを落として動作テストも行いましたが、きちんと指定通りに動きました。「すごい!感動した!」みたいな話ではなくて恐縮ですが、我が家のデータセンターはこれにて安全性の確保がされました。めでたしめでたし。
今回のまとめ

と、言うわけで無停電装置(UPS)について書いたわけですが、ホントに必要性次第だと思うわけです。常時電源を入れておく必要のある精密機械に関しては「必須」という大多数のご意見ももっともだと思うし、私は安心を第一優先にしましたが、NASとは別のストレージで確実にバックアップをとる運用をしていればNASが壊れても問題ないわけです。(それなりに高価だとは思うので、問題がないと言うことはないのでしょうが…)
いずれにしても「NASを導入する際には無停電装置もセットで考えた方がよろしいぞ!」
大多数の方がおっしゃっているご意見ではありますが、結果私も賛成です。用途にあった製品をご検討くださいませ。


